最高裁判所第二小法廷 昭和43年(オ)555号 判決 1968年9月27日
上告人
徳永史雄
ほか七名
右代理人
安藤真一
奥村孝
阿部清治
被上告人
長浜合名会社
代理人
清木尚芳
被上告人
長浜礼蔵
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理由
上告代理人阿部清治の上告理由について。
原審の確定するところによれば、上告人史雄は本件家屋の元賃借人であつた栄の死亡により、他の上告人等と共同で右家屋の賃借権を相続により承継したものであるが、栄の長男にあたるところから、当該家族の中心をなし、対外的にはその代表者的存在であり本件傷害行為およびガレージの建築行為も同人が主体となつて行つたというのであり右傷害行為は本件家屋の明渡をめぐる紛争に端を発したものであるところ、上告人らはその謝罪、損害賠償について全く無関心であつたのみならず、その後に至つて右史雄が主体となつて、本件ガレージを無断で築造し、被上告会社からの抗議にもかかわらず、上告人方においては頑としてこれに応じなかつたというのである。
これらの事実関係によれば、上告人らは現に本件家屋の用法に関し、賃借人としての義務に違反するのみならず、同人らのその前後の態度からして、賃借人である被上告会社としては、上告人らが将来も賃借人としての義務を誠実に履行することを期待しえないものというべきであるから、これら上告人らの所為および態度は、上告人ら全員について本件賃貸借契約の即時解除の原因となりうるものと解するのが相当であり、これと同旨の原審の判断に何ら所論の違法はない。また、上告人史雄の受傷が被上告人礼蔵の積極的な攻撃によつて蒙つたものでないとする原審の認定判断は、挙示の証拠関係に照らして肯認することができる。したがつて、原判決に所論の違法はなく、論旨はすべて採用できない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(奥野健一 草鹿浅之介 城戸芳彦 石田和外 色川幸太郎)